ストーリーは、「男の出生率が非常に低く、男性をより多く生むために姉妹で夫を共有する家族単位の共同体が根強い世界。兄弟は財産として大切に守られ、売り買いされている。時代背景としては大型蒸気機関と拳銃と王侯貴族が平定している。主人公の家は騎士に成り上がってから土地を賜って農民になっていて、格式的には低いが自尊心が高い。あるとき、自分の土地で騎士が襲われているところを家族の一人が助けると、それは実は女王のだった」というもので、王道を地で行くストーリー展開はわかりやすくて安心して読むことができました。
冒頭が、世界観と主人公の家族の特殊性の説明のバランスは悪くないと思うのですが、家族を大切にするというか、家族のまとまりを重視する作品内容のせいで、主人公とそのごく周辺以外は個性に欠けるところがあったり、ストーリーにも深く関わってくるのに最後まで名前が出てこないキャラクターがいたり、という部分が読みにくかったです。要するに沢山のキャラクターが誰が誰やらわからなくなって読み返したりという事が何度かありました。小説作法的に言う「神の視点」のせいもあると思うんだけど。
アニメ化するにあたっては、冒頭の平和な日常生活を引き伸ばす(世界観だけでもアニメなら魅せられると思う)、中盤の旅路の省略を付け加える(主人公の周辺から都市部へと移る時の主人公のカルチャーショックをメインにストーリーを作る)、中盤から終盤にかけて時間が飛ばされているところのストーリーを追加していく(個々のキャラクタの性格を反映したストーリーを組み入れる)、という形で長編の作品に仕上げられるのではないかと思います。
この小説が現代のアニメ的に受ける理由として、「女性が沢山出てくる必然性が世界観に組み込まれている」、「世界観の中の社会として不安定な時期が選択されていてキャラクタの個性が違和感無く出せる」、「小説としては母親の個性が潰されていたが映像化すれば少なくとも視覚的に個性化できるのでストーリーがわかりやすい」
ところで、ハリー×レイヴンだと思ったのに詳しい話が出てこなかったのがちょっとがっかりかな。トリニの出番が少ないのもがっかり(ツンデレ押しな自分としては是非クローズアップして欲しい)。舞踏会で主人公が引っ張りだこなシーンも読みたかった。
主人公の銃が「デリンジャー」だったので、他の人の銃ももう少し個性があってもよかったと思う(サタディーナイトとか、ボディーガードとか、って短筒ばかりなのは自分の趣味ですが。世界設定的にも男が護身用の武器を携帯する習慣があるというのは違和感がないと思われるけど)。
後書きに「「なぜ、男子の出生率が極端に低いのか、説明がまったくない」などの批判もあった」と書かれていますがそれは、ジャンルがSFとして認知されていたからでは?と思うぐらい違和感がなく読めました。はっきり言って雄雌が均等に繁殖する生物の種類なんてとても少ないし、それに対して科学者が確固たる証拠を持って説明できない(要するに進化論などを裏づけする要素がない)現代で上記の批判はナンセンスだと思う。
P.S.
ここまで書いて、顔の美醜が書き分けられるなら、萌え絵のアニメ化でも悪くないかな、と思った。
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